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【復活】夏アニメの評価が「私、気になります!」

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氷菓
(独立系U局)
http://www.kotenbu.com/
☆☆☆☆☆
 原作は米澤穂信のミステリー小説〈古典部シリーズ〉。著者は昨年日本推理作家協会賞を受賞するなど気鋭のミステリー作家として活躍中ですが、01年にデビュー作『氷菓』を刊行した時はあまり評判にならず、〈古典部シリーズ〉も2作で中断。今回は原作刊行から11年目のアニメ化ということで、サイクルが速い近年では珍しい。
 何故11年前にあまり売れなかったというと、〈角川スニーカー文庫〉というライトノベルのブランドから出たことが要因でしょうね。〈古典部シリーズ〉はライトノベルのテンプレというか“お約束ごと”をわざと外していて、“萌え”やラブコメを期待している若い読者には物足らなかったろうと思われます。〈古典部シリーズ〉の“幼馴染み”はテンプレ通りに主人公を朝起こしに来たりしませんから(笑)。

 しかし、ライトノベルに不馴れな一般読者にとってはむしろ読みやすいとも言え、その後角川文庫に移ってシリーズは継続中。北村薫ファンあたりからは受け入れられる作品じゃないでしょうか。このアニメも、普段はアニメを見ないミステリーファンにこそ見て頂きたいですね。
 ミステリーと言っても人が死んだりはしなくて、「毎週金曜昼に別人が図書室から貸り出して、午後に返却している本の謎」「撮影が中断してしまった文化祭映画の結末」「合宿先に現れた幽霊の正体」といった日常的なミクロな事件です。「氷菓」というのは古典部の部誌の題名で、この由来の謎を探るのが前半の山場になっています。
 「氷菓」では行方不明になった人は行方不明のままだし、一度壊れてしまった人間関係は元通りには戻りません。劇的な変化は起こらず、ほろ苦い現実をほろ苦いまま受け入れるあたりは、“大人のための青春ストーリー”と言えます。

 「京都アニメーション制作」はもはやブランドになっていますが、本作は学園日常生活のリアリティという京アニが最も得意とする部分がよく現れています。シナリオは原作に忠実ですが、トリックの説明など文字だけだとちょっと物足りないかなという部分は、映像でしっかり補っていて、毎度ながら原作の的確な読み込みに感服します。
 細かいことですが、例えば登場人物たちが揃って下校する光景は学園ものの定番ですが、現実に於いてはよほど街から離れた高校でもない限り校門を出たらすぐ四方八方に散ってゆきますよね。このアニメでは違う中学から進学してきた子は、先に別れてゆく。そういう細部のリアリティに拘った作品なんです。
 主人公グループが最初からやけに結束が堅かったりするのも嘘臭いんですが、古典部員4人は色々な出来事を経験して少しずつ距離を縮めてゆきます。高校1年が終了しましたが、今のところ主人公とヒロインは付き合い始めていない(笑)。アニメ版のラストは将来を予感させる表現になっていましたが…。

 現在原作は5巻まで刊行されていて、アニメでは4巻まで消化して高校1年生編が終了しました。「私、気になります」というヒロインの口癖はネット界隈ではそれなりに流行りましたし、アニメ第2期が何年先になるのか私も気になりますね。



TARITARI
(独立系U局)
http://taritari.jp/
☆☆☆☆
 高校合唱部アニメ。春期の「つり球」に続いて江の島が舞台というのは偶然かな。
 合唱部員は寄せ集めで、本格的な“声楽部”から落ちこぼれた子、音楽家だった母親が死んでから音楽をやめていた子、他との兼部が2人、勧誘された転入生が1人の計5人。バックボーンもバラバラの5人が、合唱という一点で力を合わせてゆきます。
 感心したのは、5人それぞれの1人の時間をきちんと描いている点。個人練習したり、家族との会話があったり、将来について悩んだり、といった部分を地道に積み重ねたことで、5人のキャラクターが鮮明になりました。
 1クール3ヶ月アニメの場合、主役グループは5〜6人が適当じゃないかと私は思っています。それより多いと存在感希薄な奴が出てしまうし、3ヶ月かけても5人のキャラクターを描けないようでは出来が宜しくない(笑)。その点でこのアニメは5人の群像劇としてバランス良く描けていました。男子2人、女子3人。凡庸な制作者だと、恋愛要素を入れたくなるところでしょうが、この作品の場合は入れなくて正解。恋愛入れると焦点がボケたと思いますね。
 また、文化祭に向けて練習していた終盤で、突然文化祭中止が発表されるという場面。主人公たちがショックを受けた場面を敢えて描かずに、次の場面は何日か経ったであろう放課後の廊下で、テンション低めの主人公たちが“再会”するんですね。これは上手いなあと思いました。小津安二郎は「人は悲しい時には笑うもんだ」と言って、いかにも“悲しんでいる”という演技をさせませんでした。この場面も主人公たちが泣き喚いたりしていたらゲンナリするところです。

 物足りないのは合唱場面が少ないことですが、合唱というのは人数が少なければ少ないほど各人に高度な技量が要求されるので、やむを得ない面もあります。中には高垣彩陽のように音大出の声優さんもいましたが。
 最終回に向けての展開には無理がありましたねえ。廃校が決まり文化祭も中止されてしまったものの、合唱部は閉鎖された校内でコンサートを強行。そこに吹奏楽部や音楽教師がやって来て協力してくれるんですが、取って付けたように70年代青春ドラマみたいなラストにする必要は無かったと思いますよ。それまで細かいところを丁寧に描いていたのが台無し。5人の行動は行き当たりばったりだし、悪玉理事長を止めてくれた校長先生は最後どこに行っちゃったの?ラストの展開だけはガッカリ。



超訳百人一首 うた恋い。
(テレビ東京)
http://www.anime-utakoi.jp/
☆☆☆☆
 百人一首の恋愛歌をテーマに、作者たちの恋愛や人間模様を史実をベースにしながらも大胆にアレンジ。例えば金髪や茶髪はいるし、言葉づかいは殆んど現代語なんですが、平安朝文化を身近に感じさせるためにはなるほどこれも一つの方法かな。原作コミックスは受験生に“参考書”として売れてるんだとか。
 一首ごとの短編作品で特定の主人公はいませんが、選者である藤原定家が全体の進行役になっています。少し不満が残るのは、和歌そのものの解釈は意外に通り一遍である点。それを始めると本当に受験参考書みたいになりかねないんですがね…。
 SOUL'd OUTというグループによるエンディング曲は私が苦手なヒップホップなんですが、番組を古臭い雰囲気にせずに引き締める絶妙の効果があったと思います。



貧乏神が!
(テレビ東京)
http://www.binbogamiga.net/
☆☆☆☆
 桜市子は金持ちで美人で成績優秀という強運な女子高生。ただ、無意識に周囲の幸運まで奪い取ってしまう特異体質のため家族や友達とは縁が薄い。そこへ市子の“幸福エナジー”を吸い取るべく下っ端“貧乏神”の紅葉が派遣されてきた…。幸福エナジーを吸い取ろうとする紅葉と取られまいとする市子のドタバタコメディ。
 最初は敵対していた2人の間に徐々に信頼感が生まれてきて“喧嘩友達”のようになってゆくのは、少年漫画の王道展開と知りつつもホロリとさせられたりしました。これは市子のキャラクター設定が上手かったということに尽きます。嫌な奴っぽい言動をしている割に、根はいい奴なんですね。
 ストーリーも後味良く終わりました。原作コミックスはこの後も続いているんですが、アニメはこのまま終わった方がいいかも知れません。



もやしもん リターンズ
(フジテレビ)
http://kamosuzo2.tv/
☆☆☆☆
 舞台は農業大学。発酵や醸造をテーマに、濃いキャラクターたちが活躍するコメディ。原作コミックスは手塚治虫文化賞や講談社漫画賞を受賞。
 07年に第1期が放映されており、5年ぶりの2期ということになります。実は途中の2010年に同じ“ノイタミナ枠”で実写ドラマになっているんですが、これは余計でしたなあ。主人公は細菌が肉眼で見えてしまうという漫画ならではの設定があるんですが、実写にすると空々しいばかり。近年「もやしもん」「うさぎドロップ」「荒川アンダーザブリッジ」のように当たった深夜アニメを実写化するケースがありますが、私見ではアニメを超えられませんね。アニメはアニメ、ドラマはドラマ。棲み分けた方が良いのかなと。



人類は衰退しました
(独立系U局)
http://www.maql.co.jp/special/jintai/
☆☆☆★
 人類が激減した数世紀先、突然現れた“妖精”という“新人類”と共生している世界。人類滅亡というのは極めてSF的なテーマなんですが、何故衰退したのか、どうやって生き延びるのかというSF的な見せ場は殆んど活かされていません。主人公の「私」も人類最後の学校の卒業生にもかかわらず、先の心配をする様子もなく優雅にお菓子作りを楽しんでいたり…。
 近未来SFとして見るよりも、妖精と共生しているまったりとした中世風ファンタジーとして見た方が正解なのかも知れません。そうしたファンタジー世界に伊藤真澄さんのエンディング曲は合っていたと思います。私は「あずまんが大王」以来この人のファンで毎回エンディングが楽しみでした。



じょしらく
(TBS)
http://www.starchild.co.jp/special/joshiraku/
☆☆☆★
 女性落語家たちが楽屋でとりとめもなくガールズトークを繰り広げるギャグ漫画が原作。ストーリー担当は久米田康治ということで、メタ発言や時事ネタ羅列ネタ自虐ネタなど「さよなら絶望先生」の作風を受け継いでいます。
 登場人物が女性落語家というのは久米田先生の当時の担当編集者の企画だそうで、作者自身が落語に詳しい訳ではないようです。落語家という設定を十分に活かし切れなかったのはちょっと残念なところです。
 「絶望先生」では新谷良子演じる奈美がどんどん“ウザキャラ”になっていきましたが、「じょしらく」最終回で新谷さん演じるウザい新キャラが登場したのには笑いました。こういう“楽屋落ち”も久米田先生の得意技。



ゆるゆり♪♪
(テレビ東京)
http://yuruyuri.com/
☆☆☆★
 “百合風味”の日常系コメディ。昨年に続く第2期。太田雅彦監督は「みなみけ」「みつどもえ」そして「ゆるゆり」など、単調になりがちな日常系ギャグアニメを、メリハリをつけながら見せてゆく技術が高いと思います。



この中に1人、妹がいる!
(TBS)
http://www.tbs.co.jp/anime/nakaimo/
☆☆☆
 主人公が周囲の女子たちから何故かモテモテ。こういうラブコメはなるべく能天気にやって欲しくて、変にリアリティを入れようとすると無理が生じます。本作はその点で割と良い線を行ってたかな。
 言い寄ってくるヒロインたちの中に正体不明の実妹が混ざっているので、妹だけは避けねばならないという縛りも活かせていました。ヒロインたちは様々な思惑から、妹と自称したりするのですが。
 アニメは妹が判明したところで終了しましたが、原作は「しかし、それは間違いで実は…」と続いているらしい。アニメはきれいにまとまったのでこのままでも良いと思いますがね。



ココロコネクト
(独立系U局)
http://www.kokoro-connect.com/
☆☆★
 男女5人の高校生が超常現象を共有したことで、絆を深めてゆくストーリー。
 5人のキャラクターは鮮明に描けていたし、展開自体には無理がなかったけど、性格が全員あまり宜しくないんですよ。主人公は自分を犠牲にしてでも他人を救いたいという少年なんだけど、仲間にもそれを強要して、出来ないと詰ったりする(笑)。押しつけがましかったり、自分勝手だったりして、それぞれ言動が鬱陶しい上に、5人の間で恋愛が絡み合ってゆくので益々脂っこい。
 序盤の出来の良さで見続けたら、キャラクターが胃にもたれてしまった感じでした。


(100点満点。☆は20点、★は10点)
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by funatoku | 2012-09-29 16:16 | 文庫・新書 | Trackback | Comments(0)