カテゴリ:酒場・飲食店( 9 )

「一乃屋」(国分寺市)の鴨汁うどん

私が今まで一番長く住んでいたのは、東京都東村山市である。ところが、その東村山市が
うどん好きの間で“聖地”とまで呼ばれている街であることを知ったのは、東村山から転居して
何年も経ってからである。住んでいた当時はまだ若くて、同じ麺類ならうどんよりラーメンの方に
関心が高かったせいかも知れない。しかし、自分の街の名物を知らなかったとは我ながら不覚。
それどころか「多摩うどん」或いは「武蔵野うどん」と呼ばれるジャンルがあること自体を全く
知らなかった。多摩地区に昔からそんなにうどん屋が多かったという印象も無いんだけどなぁ。

ともあれ、この「多摩うどん」は、太くてゴツい麺で、肉の入ったつけ汁につけて食べるのが特徴の
ようで、薄味でツルっとした讃岐うどんや関西うどんとは、全くの別物の野趣に富んだうどんである。
中央線国分寺駅から程近いこの「一乃屋」(かずのや)は、看板は蕎麦屋なのだが、多摩うどんの
名店として人気がある。そして客の半数以上は「鴨汁うどん」(1,150円)を注文する。

ザルに乗った麺は結構大盛りである。どういう訳か多摩うどんの店は概して量が多いようだが、
元々店屋物というより家庭料理をルーツとしている名残りなのかも知れない。
この店は多摩うどんの中では滑らかな麺なので、ツルツルと手繰っていける。
そして、鴨肉とピースのネギがたっぷり入った暖かいつけ汁、これが絶品。
つゆの色は黒っぽく、鴨肉の旨味が実に濃厚だ。最初はちょっと驚くが、癖になる味である。
そこらの「鴨南蛮」しか知らなかった私は、本当の鴨の旨味をこの店で初めて知ったとも言える。
すっかりハマってしまい、この店に来ては「鴨汁うどん」ばかり食べているので、他のメニューを
知らない(だから、果してうどんしか知らない蕎麦屋の紹介をしていいものか迷ったのだが)。
濃すぎると思われるなら、一緒に出されるおろし生姜を溶いてみると、別の風味が出てくるのだ。
あー、書いてたらまた食べたくなってきた。昨日食べたばっかりなのに…。

店内は座敷だけで、外には値段の表示も無く、様子がわからないので入り難いかも知れない。
突き出しとして供される漬物もなかなかで、これをつまみつつビールの小瓶を飲み、
スポーツ新聞なんぞ読みながら、うどんを待つのも、また愉しいひと時なのである。
国分寺市南町3-4-18 11:30~14:30 17:00~20:30 日祭休 土曜昼~15:00
国分寺駅南口から国立方向にバス通りを2、3分、不動産屋「ミニミニ」の角を左折してすぐ右側
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by funatoku | 2006-01-29 23:33 | 酒場・飲食店 | Trackback | Comments(0)

“純粋回転”寿司

久しぶりに池袋演芸場に行ったついでに、是非行きたい店が一軒ありました。
池袋の西口駅前にある回転寿司屋で、名前は「こま寿司」とか言ったかな。
この店にはせいぜい2、3度しか入ったことが無いのに、私には強烈な印象が残りました。

もの凄く美味いのか、不味いのか。高価いのか、廉価いのか。珍しいメニューがあるのか。
或いは店員や店長が変わっているのか。変な客を見かけたのか。

いずれも「否」。正直言うと味は覚えていないし、外見はごく普通。よく池袋に行く人ですら、
その存在を思い出せないかもしれないぐらいに、地味~な店構えです。

しかし、店のドアを開けた途端に、妙なことに気が付く筈です。
「狭い!」
我々の回転寿司屋に対する固定観念を、軽やかに覆すかのように店内は狭いのです。
椅子の数は6、7席だったでしょうか。それが全てなのです。

そもそもコンベアーというものは、遠くに物を運ぶために存在するはずです。回転寿司もまた然り。
広い店内に人力を使わずに寿司を運ぶのが目的である、と普通は考えます。
しかし、ここのオヤジは普通の寿司屋にすれば倍の人数は収容出来たであろう店内を、敢えて二つに
区切って奥で寿司を握り、最大7人の客のためにベルト・コンベアーを設置して、回し続けるのです。

昔、赤瀬川原平氏率いる路上観察団が、無用の長物を探し出し「トマソン」という本にまとめましたが、
確かその中に「純粋階段」なるカテゴリーがありました。昇った先には何も無い、昇ったら降りるだけ、
或いは昇った先が行き止まりの、ただあるだけの階段。それが「純粋階段」です。
そのひそみに倣って言えば、回転することに意味など無く、ただ回転するためだけに回転する…、
そんな“純粋回転”寿司で、“コンベアーの存在意義”について哲学的考察など始めてしまえば、
もはや味など覚えていないというのもお分かり頂けるでしょう。

一昨日行ったら、この寿司屋の姿はなく、その場所はマツモトキヨシか何かになっていました。
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by funatoku | 2005-03-25 01:21 | 酒場・飲食店 | Trackback | Comments(0)

丸福(荻窪駅北口)を偲ぶ

先週、昼どきに荻窪で用事を済ませたので、久々に丸福にでも行こうと前まで来たら…。

「無い!」そう、店が無くなっているのだ。店にはシャッターが下り、休業等の貼り紙は
見当たらないが、店名を記した看板にはガムテープが貼りつけてある。間違いなさそうだ。

ここ数年ラーメンブームと言われているが、20年前の80年代前半にも、ラーメンブームが
あった。今のブームとは比較にならないほど情報量が少なかったが、雑誌はラーメン特集を
組み、グルメガイド本にもラーメンが進出するようになったのは、この頃ではなかったか。
当時、グルメ評論家として権威があった山本益博氏の著書「東京味のグランプリ」の中で、
ラーメン店として三ツ星をつけられていたのは、「恵比寿ラーメン」とここ「丸福」だけだった。
つまり20年前のラーメンブームの中心的存在だったと言っても良いのである。
ただし、この店は取材を拒否していたようで、雑誌などで紹介されることは、殆ど無かった。

まだ、近くの古い店舗で営業していた頃であり、連日ここの「玉子そば」を食べるために、
店の前には行列が出来ていたものである。私がわざわざラーメンを食べに行く所謂
“食べ歩き”を始めた当初の一軒でもある。ここのスープを説明するのは、ちょっと難しい。
鶏がらがベースだったような気がするが、魚貝なども加えており、しかし最近の「武蔵」の
ダブルスープとは全く似ていないという…、説明になっとらんね。しかし、他に類の無い味で、
山本氏ならずともなかなか絶妙な味わいを感じたことは確かである。

荻窪駅北口再開発の影響を受け、新店舗に移ったのはバブルが始まる頃だったろうか。
近くのビルの一階に入り店舗は広くきれいになった。しかし、この移転を機に味の方が
何やらちょっと変わってきた。何が足らないというのではなく、ちょっとずつバランスが
悪くなってきたというのか…。そしてバブルが弾ける頃には、私の舌にもこの店の低調は
明らかになり、かつては並ばなければ入れなかったのに、すっかり閑古鳥が鳴いていた。

また、この店に行く途中に「丸福」を名乗る店が出来て、全盛期を知らない若いラーメン
ファンの中には、そちらを丸福と勘違いする人間が現れるということもあった。
今回ネットで調べたら、そちらの方は昔一緒に店をやっていた兄弟が始めたという記述も
見かけたが、真偽のほどは分からない。丸福の人は客に「支店を出したのか」と訊かれると、
「関係無いんです」とややムキになって否定していたが。

ここ数年のラーメンブームの中で、既に忘れ去られたようになっていたが、私は何だかんだ
で年に一回程度は食べに行っていたような気がする。今の丸福に食べに行くというよりは、
丸福の想い出を食べに行く、というような按配だったが。ところが昨年食べに行った時、
この店は長い低迷を脱しつつあるのではないかと感じられたのである。
なので次に食べるのがちょっと楽しみだったのだが、来てみたら閉まっていたという次第。
ネット情報によれば昨年末に閉店したようだ。(休業としているラーメンサイトもある)

もう私はラーメンの食べ歩きなど出来る年齢ではないし、しようとも思わない。
ひとつの時代が過ぎ去ったことを噛み締めつつ、「春木屋」など荻窪の他のラーメン屋に
入る気にもなれず、そそくさと立ち去ったのである。
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by funatoku | 2005-02-01 00:03 | 酒場・飲食店 | Trackback(1) | Comments(0)

「華王飯店本店」(横浜中華街)のフカヒレ姿煮めん

横浜という街が好きである。仕事などのしがらみがなければすぐに引っ越したいくらい。
東京生まれとはいえ、内陸の多摩地区育ちなので港町に憧れがあるのだろう。
そのせいもあるかも知れないが、落語や野球を見に、横浜には年に何回か出かけてゆく。

そして最近、横浜に行ったときの食事は、中華街にある「華王飯店」と決めている。
ただ、この店について私に語る資格があるのか甚だ疑問であり、書こうかどうか迷った。
というのは、私はここではフカヒレ姿煮めんしか注文したことが無いのである。
本格四川料理の店で、看板代わりのソバだけを食べるのは余り良い客とは言えないが、
勿論店の人に嫌な顔をされたことはない(空いてる時間を狙うようにはしていますけどね)。

で、この店の「フカヒレ姿煮めん」だが、HPの写真は実はかなり“控えめ”なのである。
先日、落語の前に行った時も、遥かに大きい掌大のフカヒレが乗っかっていた。
フカヒレそばが売り物の店は他にもあるが、この大きさで税込1575円というのは知らない。
麺は細麺で、他の具はチンゲン菜のみ。スープは老舗らしい安心感がある味付け。
中華街大通り善隣門近くにあり、元町・中華街駅から徒歩6、7分程度。市場通りに別館も。
フカヒレが安くて美味いお奨めの店をご存知でしたら、是非ご教示賜りたいと思います。

みなとみらい線が東横線と直通するようになり、JRの湘南新宿ライナーも増発されたので、
東京西部から横浜へは以前より心理的にも、実際の時間的にも近くなった。
実は今月もう一回行く予定であり、今から華王飯店に寄るのを楽しみにしているのである。
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by funatoku | 2005-01-11 02:00 | 酒場・飲食店 | Trackback | Comments(0)

町屋「小林」のもつ煮込みは…

串刺しになっているのである。煮込みが煮込み鍋の中で、串に刺ささりつつ
私に食べられるのを待っているのである。いや、待たれているのは私だけじゃないけど。

今や絶滅間近と言われるが、飲み屋には「下町酒場」というカテゴリーがあるようだ。
ちくま文庫から正続二巻で「下町酒場巡礼」なる名著も刊行されている程である。
下町酒場とは何ぞや?東京西部出身の私に答える資格があるかは甚だ疑問ではあるが、
もつ焼きとか煮込みが売り物で、常連客は皆チューハイを飲み…、なんて店でしょうね。

定義も曖昧なまま言うのも何ですが、皆さん「下町酒場」に行かれたことはありますか?
私は余り無かったんですよ。下町に行く機会自体が少ないし。で、前掲書にはないけど
この店にふらりと入って、生まれて初めて串刺しの煮込みに出会った訳です。
いやー、美味いですね。余計な脂分が落ちてそうなのも、大変結構。

町屋駅近くの路地裏のカウンターのみの店だが、奥行きは意外にあり、15人位入れる。
常連が多そうだが、常連でなくても居辛い雰囲気じゃないので、私はかれこれ数度目か。
もつ焼きは五串で400円。煮込みは何故かメニューに書いてないのだが、確か同じ
値段だった筈。奥のカウンター前に鍋があり、常連客は自分で串を取ったりしている。
ガツのニンニク醤油もプリッとした歯応えがあって、お気に入りである(ショウガ醤油もある)。
そして、締めにはつけ麺500円。つけダレを煮込みの汁で割るオリジナルなのである。

実は現在、小林で飲んだ帰りの中央線の中。このブログの「酒場」シリーズ初の
“実況中継”なのだが、酔っているので乱文多謝。え?いつもと変わりませんか…。

(追記 「小林」荒川区町屋2-8-16  営業時間17~24時 日祝休
都電「町屋駅前」踏切北のミスタードーナツの角を左折し、最初の角を右折した左側)
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by funatoku | 2004-12-22 23:58 | 酒場・飲食店 | Trackback | Comments(0)

蒲田「インディアン」の支那そばと半カレー

ラーメンとカレーライスの両方を出す食堂はあまたあれども、メニューがこの二品だけ
という店は、余り多くないような気がする。少なくとも私は他に知らない。
「インディアン」に行ったら是非、「支那そばと半カレー」¥1000をお試し頂きたい。

まず、支那そばが出てくる。コシのある細めの麺と透明感のあるスープ。
恐らくしょうゆは殆ど使っていないと思われ、「塩ラーメン」と呼んだ方が良いかも知れない。
始めスープはやや薄く感じられるかも知れないが、段々と魚貝系のダシの旨味が伝わる。

そして麺を食べ終わろうかという頃を見計らったように、半カレーが出てくる。
濃いこげ茶色で具は少なく、やや苦味のある本格派の洋風カレーである。
さて、カレーを何口か食べたところで、再び支那そばのスープを啜ってみよう。

ここで、“ミラクル”が起きる。

スープのダシの旨味が、まろやかな甘味を帯びて一気に口の中に広がるのである。
最初、やや薄く感じられていた自分の舌は何だったんだろうと思うほどの変化。
支那そばだけでも、カレーだけでも充分美味しい店なのだが、
是非ともセットで注文して、このミラクルを体験して頂きたいものである。

蒲田駅西口のアーケード街の突き当たり近くにあるのが支店で、本店は隣の蓮沼駅前。
味は大きく変わらないものの、営業時間や定休日が違うので要注意。
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by funatoku | 2004-12-10 14:29 | 酒場・飲食店 | Trackback | Comments(0)

中野「丸子亭(まりこてい)」のとろろめし

物心ついた頃から、私の家ではとろろ飯がご馳走だった。経緯はわからない。
小学生の頃は、手作りのカレーや餃子も食卓に上がったが、手間がかかるせいか
結局残ったのはとろろ飯だけであり、今でも両親の家に行くと、とろろ飯が出てくる。

しかし、同じ東京在住なのになかなか行けないし、その両親も年老いてきた昨今、
都内に美味しいとろろ飯の店が見当たらないのが不思議であり、不便でもあった。
中野ブロードウェイ2階で最近見つけたこの店は、珍しくとろろ飯の専門店である。

カウンターの中には大きなすり鉢が鎮座しており、ミキサーの姿が無いのが嬉しい。
ミキサーを使う店もあるけど、泡立ってしまい、粘りけも無くなるので頂けません。
その点、この店のとろろ飯は自然薯の美味みが伝わってくる本格派なのである。

ただ、ちょっと難点があって、私には味がやや薄く感じられるのに、
テーブルには塩もしょうゆも見当たらないのだ。勝手な味付けまかりならんということか。
先日も「しょうゆ下さい」と言った客に、店の人が「味ついてるんだけど、薄かった?」
うわー、濃い味好みは確かに野暮ったいけど、それはちょっとやり過ぎ。

という訳で、この店では、恐らく唯一しょうゆの小瓶がついてくるメニューと思われる
「まぐろネギトロとろろ丼」(けんちん汁もついて930円)を注文しています。
ちなみに、安藤広重の五十三次「鞠子」の茶店にも“とろろ”の看板が出ていますね。

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by funatoku | 2004-12-01 23:09 | 酒場・飲食店 | Trackback | Comments(1)

西国分寺に「鳥芳」あり

駅前からマンション街が広がる、中央線で最も夜の早い駅・西国分寺の南口から徒歩2、3分。
小綺麗な木造二階建のこの店は、4時半の開店から客脚が途絶えること無く賑わっている。

焼き鳥は1本135円~。身は大ぶりで、軟骨、砂肝、ハツモトなどの歯応えが絶妙。
煮込みも人気メニュー。お浸しが揃っているのも、野菜不足になりがちな私としては嬉しい。
安く飲むなら焼酎セットがお得。地酒も種類は少ないものの、ハズレが少なかった。

客層はサラリーマン、OLグループやアベック、老人等様々で入りやすい雰囲気。
難点は7、8時台は混んでいて入れないこともあり、9時過ぎると売り切れの品が増えること。
L.O10時半。日曜祝日休。北口駅前には立ち飲み専門の姉妹店「芳一」がある。
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by funatoku | 2004-11-15 22:29 | 酒場・飲食店 | Trackback | Comments(0)

大塚「江戸一」のカウンター席

大塚駅南口前の「江戸一」は居酒屋の名店として名高いが、
最大の特色はこの種の店としては「一人客が多い」ことであり、
「常連たちがベタベタしていない」ことだろう。
この二つが揃っている店はそう多くはないはずである。

常連たちが声高に喋っていて、初めての客が入って行くと会話がピタリと止まって
こちらをしげしげと見られるなどという店は、いくら“いい店”と言われても敷居が高い。
常連になると居心地の良さはあるのだろうが、その分煩わしさもありそうだし。

「江戸一」では店も常連客を特別扱いにはしないし、常連客も自己主張をしない。
隣で黙々と飲んでいた老人が、帰り際に大女将さんと交わした一言を聞いたら、
彼が長年の客であることが分かったりすることは珍しいことではない。

常連を特別待遇しないこの店には、一つ暗黙のルールと呼べるものがある。
店に入るとコの字型のカウンターになっていて、左手奥には常連が多いのだ。
常に混んでいる店なのだが、自然とそういう風になってゆくのが不思議。
大女将が陣取るレジ前の狭い席が一番の“特等席”。座りにくそうなんだけどね。

この店に通うようになって一年半の私は、大女将さんからは「文庫本を読む客」、
若女将さん(?)からは「のれそれ(アナゴの稚魚)を好む客」と認識されてはいるようだ。
しかし、私はもっぱらカウンター右側の席に座り、向かいの常連客たちを眺めている。
これから、長く付き合っていくうちに常連席に案内されるのを楽しみにしつつ…。
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by funatoku | 2004-11-04 17:43 | 酒場・飲食店 | Trackback | Comments(1)