林家たい平独演会「天下たい平 vol.25」(2/8 横浜にぎわい座)

柳家ごん坊「動物園」
 失業した男が動物園のバイトに雇われて、ライオンの着ぐるみで檻の中でライオンのふりをしていたら、トラと戦わされそうになって慌てる。しかし、トラが近寄ってきて耳元で「心配するな、俺も雇われた」。寄席の浅い出番でたまに聞くものの、東京のホール落語で前座がやるのはちょっと珍しいかも。明治末期に大阪で出来た新作だそうで、そういえば10年くらい前に大阪の小さな落語会でも聞いた記憶があります。

林家たい平「愛宕山」
 「今日、2月8日は楽太郎師匠の誕生日」とまずは笑点ネタ。この日は場内の平均年齢が結構高めで、「笑点」ファンが多いのかも。この 「天下たい平」は普通は日曜昼にやっているのだけれど、今回は金曜夜に開催し、過去にここでネタ下ろしをした分から二席。
 自宅で豆撒きをしようとしたら奥さんに止められて、仕方なくレジ袋の中に向かって豆を投げ入れた(笑)。ギャラは出ないが蟹を食べさせると言われて山代温泉に行ったら、他の人が蟹を食べている間に落語をやらされた。などとマクラを振ってから本題へ。
 たい平師演じる幇間の一八の印象を一言で言えば「ダメ人間」(笑)。何しろ酒席で客より酔っ払っているし、小狡さや計算高さは余り感じさせないお調子者。旦那に連れて行かれての山登りの場面の、息の演じ方が実に絶妙。歌を歌って勢いをつけようとするも、「歌と足が合わないね」というあたりは爆笑しました。
 旦那のキャラクター設定は微妙に意地悪。鷹揚に見えるものの、幇間への酷薄さがチラチラと出ていて、この辺の対比がストーリー全体に心地よい緊張感をもたらしている感じです。崖上でためらう一八の背中を小僧に押させておいて、「俺はお前に指示しただけだよ」と「まるで時津風親方」などというブラックな時事ネタも(笑)。
 旦那がばら撒いた小判を求めて崖から飛び降りたりする一八の必死さを、たい平師は表情豊かに演じていました。この一席は表情の比重が大きい印象でしたね。

太田家元九郎(三味線漫談)
 見るのは久しぶりかも。お変わりなくて何より。

林家たい平「幾代餅」
 TBSが取材に来た。落語家とは縁の深い局なのに何故自分にと思ったら、長老たちには訊き難い件だった。王監督の娘・王理恵が婚約者の蕎麦を食べる音が気になるといって破談になりそうな件で、落語での蕎麦を食べる音の仕草を実演させられた。うどんと蕎麦の違いなどをやってみせると、「ではカレーうどんでは?」「木久蔵ラーメンでは?」(笑)。そして問題の「オクラトロロ納豆蕎麦」をズルっと食べてみせて、「それじゃ排水口です」。
 「幾代餅」は「紺屋高尾」の同工異曲。浮世絵を見ただけで、恋の病で寝込んでしまうということ自体が現代では現実離れしていて、二次元に萌えるアニメおたくだって寝込んだりはしませんからね。ですから、私はこの噺をあまりまともにハッピーエンドまで演られるのはちょっと苦手で、立川談春師匠のように思い切った人物造型と緻密な心理描写という現代的リアリズムでゆくか、或いは思い切ってファンタジーとして楽しく演じて欲しいところです。
 たい平師はどうやら後者を選んだようで、寝込む清蔵に「餃子でも食べたのかい」と時事ネタで笑いを交えつつ進めます。そして、吉原に着いてからの描写は更にテンポアップしてとても簡潔で、帰ってから幾代を迎えるエンディングまでも実に快調に進みました。この噺にしっとりとした廓噺の風情を求める人にはちょっと物足らない演出かも知れませんが、上述の通り私はたい平師匠の演出を支持したいと思います。
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by funatoku | 2008-02-16 20:37 | 落語 | Trackback | Comments(0)
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