特選落語名人会(5/7 東京国際フォーラムCホール)

1500席もある音楽ホールが落語向きだとは思えない。その上、この日の座席は三階席の2列目。3列目には人がいなかった(笑)。高い山から谷底を覗くと座布団に座ってる男の頭部が見えているという状態。

三遊亭歌ぶと「道具屋」 歌武蔵師の弟子とのこと。

春風亭小朝「浜野矩随」 最初に全日空云々と話し始めたのだけど、しばらく何のことを喋っているのか分からなかった。調べたら高知空港で全日空機が胴体着陸したのは3月13日。微妙に話題が古い。このズレに、嘗てはマクラで客席を沸かせた小朝師の時代感覚のズレを読み取るのは穿ち過ぎか。歌舞伎界と落語界を比較するマクラは聴いたことがある。客も着飾ってくる歌舞伎と、そうではない落語、とか。マクラは新ネタである必要はないのだけど、小朝師は新しさで売った人だけに、ちとツライところ。
「浜野」は私が苦手な噺。彫金名人の浜野矩安の息子、矩随(のりゆき)は親に似ない不器用で、河童を彫ったら狸のようになってしまったという腕前。父の代から贔屓にしてくれた若狭屋からも見放されてしまう。そこで母親に叱咤されて、精魂込めて観音像を作り、若狭屋からも認められたが、帰宅してみると母親は自害していた。その後、名人となった矩随の若き日の出来事。
円楽師の得意噺だが、小朝師は臭くなり過ぎない程度に笑いも交えて粋にまとめてみせた。
でもねえ、下手糞が三日三晩徹夜しても名人にはならんでしょ。それに息子が傑作を作ったことを喜びながらも母親は何故死を選ぶ?「身代わり」ということだと頭では分かるんだけど、現代これをリアルに描くのは難しい。やっぱり苦手だなあ、私は。

林家たい平「明烏」 ニッポン放送の仕事を終えてから神宮球場にかけつけて斎藤佑樹くんの登板を見てきたことなど軽くふってから本題へ。
たい平師は廓噺や人情噺だと、余りギャグを入れないでサラリと演じることがある。今日はどうなるかと思ったが、「二十歳といえば松坂が二億円稼いでいた頃」なんてギャグが出てきたのでひと安心。「中継ぎ岡島」「フランス大統領選」だの時事ネタを効果的に散りばめつつ心地よいテンポで噺を進めた。廓の婆さんが、何故かドラえもんの大山のぶ代で(笑)、「どこでも扉」なんて余り必然性は無いギャグだけど、粋に収まっているよりこうやって笑いを取りにくる方が嬉しい。「開けるなよ。その戸棚には(桂)文楽師匠の甘納豆が入ってるんだから」というギャグで、有名な場面をスルーしたのにも吹き出した。まあ、確かにあの甘納豆にも必然性は無いけどね(笑)。

立川談春「妾馬」 「浜野矩随、明烏と続いて何をやればいいのか。俺だけを知らないお客さんも多いのに、俺がトリってのはイジメですね」なんてボヤいてみせる。三階席には驚いたのか、「“夢空間”が東京国際フォーラム押えました、って言ってきたんだけど」そもそも落語には広過ぎると主催者批判(?)。こういう時の談春師は気合は入ってるんだよねえ。「今日は三階席に向けて演る」なんて嬉しいことを言ってくれるが、これは結果としては必ずしもギャグではなかったのである。
談春師の「妾馬」は3月の浦和以来なのだけど、前回の「妾馬」が凄かった。長いマクラで少年時代を語りながら母親に悪態をついていて、いつの間にか自分と八五郎のイメージを重ね合わせるという手品のような出だしで、あとはもう客を掌で転がすように笑わせ、泣かせる迫力の一席で、あれこそCD化して欲しかったと思う。今日は時間の関係かさすがにあのマクラは省略されていて、早々に八五郎登場。前回に比べると、がさつ者というよりは「お世取り=みみずく」や「椎茸昆布」のギャグを強調していて、粗忽者の気配が強いのである。そう思って見ると、どうも全体的に仕種も浦和の時より大きくて、本当に三階席にも向けて話しているのだと気づいた。これには感動した。お座敷でも大ホールでも同じ落語を演るのが名人なのか、変えるのが名人なのか。前のお二人は表情で笑わせている(であろう)部分が多かったが、この日談春師だけが距離を感じさせなかったのである。
この日の「妾馬」をCDにすると、浦和の時に比べるとやや脂っこく感じる部分があるかも知れないけど、「やる度に上手くなってる」などという解説は間違ってない(笑)。
それにしても談春師の「ガラッ八」はいいなあ。赤井御門守と仲良くなったのも分かるなあ。
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by funatoku | 2007-05-10 22:12 | 落語 | Trackback(1) | Comments(1)
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タイトル : 特選落語名人会 春風亭小朝・立川談春・林家たい平
特選落語名人会 春風亭小朝・立川談春・林家たい平 2007年5月7日(月)会場:...... more
Commented by funatoku at 2007-05-13 10:24
>ぎスケさん
トラックバック有難うございます。私からもトラックバックしたいのですが、いまだにやり方が分からないので、リンクさせて頂きました。これも最近やり方が分かったんですけど。


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