志らく師匠の「シネマ落語」は「志らくのピン」を渋谷でやっていた頃によく聴いたが、「志らくのピン」が「古典落語編」と「シネマ落語編」に分かれてからは「古典落語編」に行っていたので、久しぶりになる。
シネマ落語って何?という説明は後述。 立川らく次「看板のピン」 先頃めでたく二つ目昇進が決定、のはずだったのだが…。 立川志らく「不動坊」 先日の立川流二つ目昇進試験で、らく次さんも含めた受験者9人中7人の昇進が決定したのだが、昨日家元から電話があり「ナシにしよう」。志らく師匠の進言もあり、合格者にも懐メロ1000曲、小唄500曲の追加試験が課されることになったとのこと。前座諸兄にはお気の毒としか言いようがないけど、取り敢えず曲数で熱意を示せという基準のようだ。しかし1000曲って凄い数だ…。 その志らく師匠も家元に破門されそうになった。原因は兄弟子・立川談春の「en-taxi」での連載。 家元が可愛がっていたぬいぐるみのライオン(ライ坊)を叱られるたびに蹴飛ばしていたら、破けて中の綿が出てきたので腹巻をさせた。「どうしたんだ?」「風邪をひいたから腹巻をさせておきました」「そうか。ありがとう」。 これ全て志らく師匠のネタとのこと。しかし、談春師匠がそのままエッセイに書いたのを家元が読んで激怒、「お前と志らくは破門だ!」。慌ててネタであることを説明して難を逃れた。「70過ぎのおじいさんが、(ぬいぐるみのことで)、怒っているわけで…」 「不動坊」は三代目柳家小さんが上方から持ってきた噺で、今日は東京では演じ手のいない大阪でのサゲで演じる。私は志らく師匠の「不動坊」は一昨年の夏以来二回目、私はこの噺は志らく師匠に合っているのではないかと思っているのだが、著書でも後半のドタバタ場面を「リアリティが無い」と切り捨てている。 今日もちょっと慌しくて、笑わせどころの「鉄瓶」のくだりもハイスピードの中に埋もれてしまった感があった。この日は全四席演じたので、時間的にも厳しかったのかも知れない。サゲは「あ、お前、噺家じゃねえか」「遊芸遊び人ではなくて幽霊遊び人」。確かに死語ですな。 (なお、この噺については私のmixi日記に志らく師匠直々のコメントを頂きました) 立川志らく「鰍沢」 「鰍沢」は先代・林家正蔵(彦六)が得意とした怪談話。ただサゲが「お材木で助かった」というのは「いい加減にしろ!どんな落ちだ。こんだけ緊張させておいて、それはないであろう。まあ、このギャップが落語なのだが」(「志らくの落語二四八席辞事典」)。という訳で、最後にお熊が川の中から現われるというホラー映画的なオリジナルのサゲ。また、2000年に刊行された「全身落語家読本」では、映画「シャイニング」のようなサスペンス劇と評している。当時既に今日演じるシネマ落語「シャイニング」を作っていたかどうかは不明だが、長く暖めていたアイディアなのだろう。 立川志らく「粗忽の使者」 「鰍沢」の途中で携帯電話を鳴らしたのは、事務所の社長だった。「まさか身内とは…」(笑)。林家正蔵の申告漏れは、誰かがタレこんだはず。「多分、いっ平でしょう」。 こういう粗忽者の噺は志らく師匠の独壇場。狂気と紙一重の粗忽ぶりを、速いテンポで畳みかけて爆笑させる。高速の余りか、途中「武士が“ちょいと”とは言いませんが」なんて言い違いもあったのだが、この場合全く瑕瑾にならない。 立川志らく「シネマ落語・シャイニング」 シネマ落語は映画のストーリーを新作落語にしたもので、志らく師匠のオリジナル。古典落語の人物や設定を膨らませているので、洋画が江戸落語の世界になってしまうのだ。映画好きも、落語好きもそれぞれ楽しめるので人気が高い。この日の場合、先に演じた「不動坊」と「鰍沢」の設定を借りている。「粗忽の使者」「看板のピン」のクスグリも入れるので、今日の全部の噺が色々と絡み合う楽しみがある。作るのは大変だろうなあ。 「不動坊」で幽霊を演じた噺家林家正吉が主人公。かつて「鰍沢」のお熊の家だった宿に、冬の間留守番に行くのだが、そこでお熊の霊に操られて狂気に駆られてゆくという設定。私はホラー、サスペンス映画が苦手で「シャイニング」も見ていないのだが、見てなくても十分に楽しめる。楽しめるけど、見ていた方がより楽しめることは確かだと思う。 鰍沢に落ちたはずの正吉が氷漬けになって発見されるが、その形相の凄まじさ。「何、怒ってんだ」「怒ってるんじゃねえ。凍ってるんだ」というサゲ。こちらのサゲも「鰍沢」流の脱力系。
by funatoku
| 2007-04-21 18:54
| 落語
|
Trackback(1)
|
Comments(2)
Tracked
from らくごのパッチBLOG
at 2007-04-22 10:41
私もシネマ落語、ご無沙汰しちゃってます。渋谷には随分通ったのですが・・・これは行きたかったんですけど。
志らくのおかげで偏った映画趣味の私に名作を見るきっかけが出来ました。 シネマ落語は兎も角、このキューブリック作品はいつか観たいと思っておりやす。
0
Commented
by
funatoku at 2007-04-23 02:05
最近は「志らくのピン」もチケットを取りにくくなりました。
私もシネマ落語で初めて名作のストーリーを知ったケースが多いです。
|
カテゴリ
以前の記事
2012年 11月 2012年 09月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 06月 2005年 05月 2005年 04月 2005年 03月 2005年 02月 2005年 01月 2004年 12月 2004年 11月 検索
フォロー中のブログ
メモ帳
No Rakugo No Life しょの2 ~落語三昧~
野球場にて Mr.Bation らくごのパッチBLOG こちらの日記を休止して、引き続きmixiで日記を書いておりますが、最近一部の日記をこちらに転載することにしました。宜しければmixiで「粗忽庵」と検索してくださいませ。 また、スパム投稿防止のため、コメントは承認制、トラックバックはエキサイトブログのみとさせて頂いております。どうか悪しからず。 最新のトラックバック
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||