人気ブログランキング | 話題のタグを見る

立川志らく「第7回志らく百席」(7/1 横浜にぎわい座)

立川志ら乃「真田小僧」 ギャラを振込むので銀行口座を作れと言われて、銀行に行ったら
身分を証明するものを見せろと言われたが、保険証も運転免許も持ってない。パスポートでも
良いというのだが、見つからないので作り直そうと思い、住民票を取りに役場に行ったら、
身分を証明するものが必要だと言われた…。「永遠に輪に入れない(笑)」
サゲは、子供に小遣いを巻き上げられた経緯を奥さんに訊かれて、「だったら1銭くれ」

立川志らく「二十四孝」 若貴兄弟喧嘩。あれほど喋らなかった貴乃花が喋り捲っている。
「まるでバスター・キートンから、黒柳徹子になったみたい」しかし、金を貰って喋ってると思うと
腹が立ってくる。今、黙っている若乃花の方が商売上手かも。と、親不孝者の噺へ。

母親を蹴飛ばしたという乱暴者と、それを諌める大家という場面から噺は始まる。
「そんな了見なら、出て行ってくれ。店立て(たなだて)だ」「函館?」
大家が唐土の二十四孝を例に親孝行を説くのだが、このあたりは「天災」の名丸先生にも
通じる説得するものの怪しさと、される者の屁理屈のやりとりが面白い。
「それにしても二十四孝の逸話は八五郎が指摘するのだが、変だ」(『志らくの落語二四八席
辞事典』
)。特に郭巨という男が母親に妻の乳を飲ませるために、子供を捨てようとする逸話。
「メチャクチャだ。このエピソードをもっともらしく語る落語家がいるが、変ですよ」
母「幸子さん、お腹がすきました」
妻「お母さん。さっき飲んだじゃないですか」
母「お願いしますよ」
妻「はいはい。少しだけですよ」
母「ありがとう。ぐちゅぐちゅぐちゅ」(前掲書より)

確かに「ババアなんかほっておいてもじきに死ぬよ!赤ん坊を殺すなんて人間じゃねぇ」
という八五郎の方が、正論であり常識人に見えてきますねえ。もっともらしい教訓を含んだ
ストーリー自体に、ツッコミを入れる時の志らく師匠は実にイキイキしてるなあ。
母親の代わりに自分が蚊に食われようとしたが寝てしまい、母が扇いで蚊を防いだという
通常のサゲまでいかずに、八五郎が友達にトンチンカンな親孝行を説いて、お気に入りの
「孝行の威徳によって天の感ずるところ」を振り回す場面で終わり。

立川志らく「化物使い」 映画『リング』の貞子はテレビも無い時代に死んだのに、何で
テレビから出てくるんだ、というツッコミは前掲書でも書いていたが、その先があった。
「秋葉原の電気屋だったら、並んでいっぱい出てくるのか?そもそも出てくるのは大型テレビ
とは限らない。小さなテレビや携帯電話から出てきたって、踏んずけちゃえばいい」

噺は職業斡旋所の場面から始まる。人使いの荒い隠居の様子を細かく描写する人もいるけど、
志らく師はそちらにはあんまり興味が無さそうだな…、などと思っていたところ、
急に睡魔に襲われた。余程疲れていたのか、500mlのビールのせいだろうか。
寄席定席に通っていた頃、長丁場で必ず1回は眠気に襲われたので、どうせ眠るなら前座や
見飽きた色物のところで眠ろうなどと考えたが、いざ眠ろうとすると眠れないものなんですな。
そして不覚にも眠りに落ちてしまうのは、何故か大抵上手い人、名調子の人だったりして
後悔するのだ。志らく師匠は随分聴いてきたが、眠ってしまったのは初めてである。
起きた時にはもう、狸が隠居の前に現われていた。

宮田陽・昇(漫才) 初見。眼鏡をかけて甲高い声の陽と、小柄な昇。喋り漫才の中に
挿み込む、体を使った芸が面白い。漫才で背の低さをからかうネタは多いが、両足を伸ばして
一塁送球を受ける昇より手前で、陽が普通に送球を受けてしまうというギャグは秀逸。

立川志らく「佃祭」 戸隠様のエピソードだけ振って、そのまま本題に入る。
今までに聞いたこの噺の女房はエキセントリックな印象だったのだが、
「この噺では、女の嫉妬はこんなにも可愛いものか、と思わせるように描かねばならない(略)
うるさい女房ではなく可愛い女房」(前掲書)と、志らく師は女の嫉妬を可愛く描くのが特徴的。
成程とも思うが、そうすると次郎兵衛が家に帰りたがる理由がちょっと弱くなるかも知れないなあ。
「お名前が判らなかったので、吾妻橋の旦那として神棚に祭って毎日拝んでいるのです」
「すぐ下げてください。拝まれてると思うと落ち着かない」という間がやたらに可笑しい。
あと長屋の月番に当たっているという与太郎のパワフルさに、私は出て来ただけで爆笑だ。
この与太郎がサゲを担うのだが、「最後の与太郎のくだりが無駄」(前掲書)とのこと。
「この落語の優れているのは、色々な要素が含まれているところだ。落語には珍しく大勢の人間が
死ぬ。そして女の嫉妬、お通夜風景の可笑しさ、死んだはずの人がお通夜に帰って来てしまう
ドタバタ、更に情けは人のためならずの人情噺、で最後に与太郎まで出てくる。とても一筋縄
ではいかないのだ」(立川志らく『全身落語家読本』)
立川志らく「第7回志らく百席」(7/1 横浜にぎわい座)_b0058309_10655.gif

このところ東京での独演会はSOLD OUTが続いていますが、この日は当日券で入場できました。
「落語ブームねぇ。波が去った時、どれだけの落語家が残れるかだ」(志らく師匠のHPの日記より)
by funatoku | 2005-07-03 01:00 | 落語 | Trackback(1) | Comments(4)
Tracked from HOME★9(ほめく) at 2005-07-04 04:39
タイトル : 第7回「志らく百席」
立川志らく、談志門下きっての才人です。映画は脚本から監督、演劇の座長もこなし、... more
Commented by kanekatu at 2005-07-04 04:27 x
初めまして、TBさせて頂いた”ほめく”と申します。
志らくの、ラインナップまで公表して、百席の独演会に挑む、その心意気が何より素晴らしいと思います。
Commented by funatoku at 2005-07-04 12:17
えーっと、お久しぶりです(笑)http://funatoku.exblog.jp/2694357/
ブログも定期的に拝見しておりますが、長年の経験に基づいた落語評は勉強になります。
志らく師は近年、楽屋オチや同世代向けクスグリを意識的に減らしているように見えます。
どのように変わっていくのかも、見届けていきたいと思います。
Commented by kanekatu at 2005-07-04 13:28 x
”初めまして”などと、失礼を致しました。
噺を聞いて眠れるというのは、上手い噺家の証拠です。
以前談志の独演会で、寝てしまった客がいて、トラブルとなった事件がありましたが、あれも談志の噺が良かったからでしょう。
下手な落語家に出会うと、聞いてる中に段々腹が立ってきて、とても眠るどころじゃありません。
Commented by funatoku at 2005-07-04 13:44
いえいえ。私はコメント頂いた方のブログは全て「お気に入り」に入れているもので。
私はかつて入船亭扇橋師匠の独特の喋りで眠くなることが多かったのですね。
昨秋初めて聴いた故・桂文枝師の心地よい大阪弁にも、眠りに誘われました。
志らく師のたたみかけるような芸風とは対極なので、我ながら意外だったのです。


<< 正徳寺温泉「初花」(山梨県山梨市) 勝てない松坂大輔投手 >>