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柳家小袁治「第59回 柳家小袁治の会」(3/28 池袋演芸場)

月の家鏡太「桃太郎」 “ヨン様”風にマフラーを巻いて登場。小袁治師匠のアイデアかな。

柳家小袁治「星野屋」 いやー、春風亭勢朝師匠がこのブログにお出でになったのには
本当に驚きました。最近HPを持つ噺家さんが増えてきたようで、落語協会のHPでは57人、
人数の少ない落語芸術協会のHPでも43人の噺家・色物さんのHPへリンクしている。
ただ中には、もう何年も更新してないなんて人もいて、それではかえって逆効果。

その点、この小袁治師匠のHPは毎日更新しているばかりでなく、その内容が面白くて、
私も愛読させて頂いているのだが、実は高座に触れる機会がなかなか無かった。
寄席の定席では常連と言えるくらいよく出ているのだが、近年は私が独演会にばかり行くので、
すっかり寄席定席にはご無沙汰になってしまったのだ。従って私がはっきりと覚えているのは、
改装直前の新宿末広亭で、「麻のれん」を演じた一席だけという心細い有様。それ以前となると
小さん門下の中堅どころで江戸前の人、という甚だ漠然とした印象になってしまうのである。

しかし、この「麻のれん」が実に良かった。江戸前で粋だがおっとり。美学に走るわけではなくて
さりげない会話でも笑わせる、というオールマイティな実力派として印象に残ったのである。
しかも、毎日のようにHPを読んでいて、もはや他人のような気はしないのに、独演会にも
なかなかスケジュールが合わない状況が続いていたのだが、今回ようやく念願叶ったのだ。

この「星野屋」、何とも後味が悪い噺で、登場人物の誰もが感情移入出来ない嫌な奴ばかり。
とんでもない悪人なのではなく、普通の人の嫌な部分を誇張しているので、重いものが残るのだ。
旦那は妾の愛情を試そうとして狂言自殺をするし、この妾もハナッから心中する気もないのに、
口ばっかり。妾の心がけが良ければ、正妻にするつもりだったなんて旦那の言い訳も空々しい。
読売新聞文化部の長井好弘さんの調べによると、新宿末広亭では03年も04年も一回も
演じられなかった噺だという(「東京かわら版寄席演芸年鑑2005年版」)が、無理も無いと思う。

こんな噺を重くなり過ぎず、浅くならずに演じるのは、かなり自信がないと出来ないのでは
ないか。落語というより、朗読劇を聴いているような錯覚すら覚える力演だった。

すず風にゃん子・金魚 「負け犬訓練所」の名前が「ハッピー・ドッグ」。私だけが吹き出した。

柳家小袁治「鼠穴」 「今のにゃん子・金魚さんは鈴々舎馬風一門なんです」
馬風一門は他にも綾小路きみまろ、大空遊平・かおりなど色物の人材が多彩だとか。
「一方、噺家はってぇと…、ロクなのがいない」。それって一体……。
昔は一門の十八番があって、弟子以外がやるのにはうるさかった。古今亭志ん橋さんが「浮世床」
(と言ったと思う)をやったら、それを得意としていた柳家小さん師が怒って「呼んでこい!」。
師匠の古今亭志ん朝師が謝ってようやく収まった。ひぇー、怖いよー。
九代林家正蔵は今「子は鎹」ばかりやっていて、よく飽きないものだと思うが、以前中入り前で
この「鼠穴」を40分以上やったことがあって、先輩に怒られていた。

師匠によるプログラムの解説「三遊亭圓生一門の十八番芸です。小袁治は平成三年の
第七回小袁治の会で演りました。しかし、その後一度も高座にかけず、今日に至っています。
(略)星野屋はネタ下ろしですが、鼠穴も初演同様でございます」

これも金に絡んだ噺で、竹次郎の兄というのが何というのか、今でも中小企業の社長なんかに
多そうで私が苦手なタイプのオヤジなのだ。夢の部分なぞ実に迫力があって、竹次郎の
絶望感を上手く浮き上がらせている。しかし、こんな夢を見るとは和解した竹次郎も芯の部分では
兄を許していないような気がするのだけど…。複雑な人間心理を感じさせるストーリーだ。

二席とも、57歳という迫力と上手さを絶妙に兼ね備えた年齢ならではの充実した高座でした。
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正蔵と言えば立川談志師匠がスゴイことを書いちゃってます。個人情報保護法とか関係ないね(笑)。

いつもお読み頂きまして有難うございます。27日午前中に訪問者数が合計2000を突破しました。
by funatoku | 2005-03-29 00:28 | 落語 | Trackback | Comments(0)


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