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<番外編>坪内祐三・福田和也『暴論 これでいいのだ』(扶桑社)

面白かったので、今回は特別に単行本を。週刊「SPA」の連載。

坪内 大塚(英志)さんは珍しくずっと活躍してるけど、バブルの時に売れてた人って、
今は沈んでるよね。
福田 団塊の世代の人っていうのは、バブルの特に一番いい目を見た。ちょうど課長から
部長という世代で。

福田 夏に靖国を参拝するということには、やっぱり仏教の“お盆”の思想が強くありますよね。
靖国が持つ“英霊の魂を招く”という思想は、そもそもの日本神道にはあんまりないんだ、
と民俗学者の折口信夫が言ってて。
坪内 結局、みんな神様と仏様を一緒くたにしちゃってて。

坪内 政治家としての石原(慎太郎)さんは、政治家が長いのに“文学者のもの言い”を
ずっとしてて、そこは魅力的だし面白いんだよ。田中康夫さんはそういう隙を作らないでしょ。
福田 やっぱりさ、作家から政治家に「出世」したつもりの人と、作家のまま政治家やってる
人の境目があるわけじゃない?田中さんは出世したんだよ。

坪内 小林よしのりがこの頃「オレは反米だ」「反・近代合理主義だ」と騒いでいるけど、
そんなこと言ったって、実はあの人自身が、すごくアメリカナイズされた生き方でやってきた
わけじゃない?あの人がすごく大衆に受け入れられ、ある種のベストセラー的に売れてゆく
というのは、アメリカ的なビジネススタイルの恩恵なわけですよ。本屋さんとか出版社の。

福田 うちのゼミに引きこもり的な学生達がいて、そういう連中は、すごくこたえたみたいね。
ナンシー(関)さんの死が。
坪内 実際のナンシーさんは引きこもりじゃないのにね。社会性と社交性があったよ。

坪内 当時の彼(蓮池薫さん)は他の拉致された人とちょっと違っていて、東京の中央大学
に行って、アメリカンロックが好きで、確実に『ポパイ』『宝島』を読んでる感じで、
それでいて勉強も結構できてさ。地方のシティボーイだったと思うのね。

福田 今日の(立川)談志さんはとても自己批評的でした。今日は非常によかった。
坪内 メタ落語だったよね。落語のストーリーに客をのめり込ませるんじゃなくて、
しゃべってる自分をもう一人の自分がクールに観察して、いま何を考えているかを
ストーリーの合間合間で、“解説”しながら、一席を展開するというさ。
福田 メタ落語をやって、その上でちゃんと泣かせ笑わせるっていう技術はものすごいよ。

福田 …いまだに一回しか投票してないんだから。ちなみにその一回ってのは、三島賞を
受賞した直後に石原慎太郎さんに入れにいったんですよ。三島賞の審査でワタクシに
一票入れてくれたから、ちょっとお返しに行かなきゃ悪いか、みたいな、わはは。
坪内 福田さん、選挙行ったこと一回しかないの?ダメだなあ。オレなんか、オカマの
東郷健にも入れたし、『ゆきゆきて、神軍』の奥崎謙三にも入れたし、アントニオ猪木の
スポーツ平和党に入れたこともあるよ。
福田 あああ、今まで誰がああいう人達に入れるんだろうと思ってたら、こういう人が!

坪内 歌舞伎ってね、今、見始めるのに凄くいい時期なんだよ。歌舞伎って一般的に
古典芸能で難しいと思われてるけど、簡単な時期と難しい時期と言うのがあるの。
今って、70歳過ぎの名優達がどんどん死んじゃって、若くてイキのいい20代の役者が
ほら新之助にしても、獅童にしても、わっと出てきてるじゃない。だから1年見れば
誰でも割りに歌舞伎について語れちゃうわけ。
福田 なるほど、役者が若い分、見ておくべき代表舞台も知っておくべき背景もまだ少ない
から、ビギナーの観客でも、割と簡単に語れるというわけですな。
坪内 だから最近、歌舞伎について語る女性ライターが急に増えてる。

福田 店に入って一目でわかる“ひどいそば屋”ってのもあるじゃないですか。4年分の
スーパードライのポスターと「そば食べましょう」みたいな啓蒙ポスターが並べて
貼ってあるような、どうしようもない店。ワタクシね、外出先で偶然そういう店に
当たっちゃったら、カツ丼頼むんですよ。
坪内 でも、そういう町のひどいそば屋は許せるよね。一番嫌なのは、鶴太郎系みたいな
そば屋。作務衣着たオヤジがジャズ流してる、エセ本格みたいな。

坪内 オリックスの谷選手の“謎”っていうのはあるよね。その謎を知りたくて、オレ、時々、
谷に感情移入してみるんだ。でも、どんなに谷本人になりきっていろいろ考えても、
なぜヤワラちゃんと自分が結婚しなくちゃいけないか、その理由は皆目わからないの。
福田 たぶんね、谷には感情ないと思う。昔の力士みたいに「いつの間にかこういう話に
なってるし、めんどくさいからもういいや別にどうなっても」というさ。

前半はここまで。機会があれば、近いうちに後半も…。これでいいのだ!
by funatoku | 2005-01-06 20:49 | 文庫・新書 | Trackback | Comments(0)


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