各方面で活躍中の村上豊さんを「挿絵画家」と呼ぶのは失礼にあたるかも知れない。
しかし、芸術的評価でも時間的制約の上でも厳しい条件にあり、華やかに見える割には 必ずしも経済的にも恵まれているとは言えない挿絵を、40年以上画業の中心に据え、 常に第一線を走り続けたということは空前の偉業と言えるだろう。 村上さんはこの夏、長年住んだ渋谷のマンションから中央区内に転居。それを機に 原画3万点をこの野間記念館に寄贈した(ご本人曰く「引き取ってくれました」)。 創刊以来「小説現代」の表紙を描き続けるなど、講談社とは縁が深いのである。 これだけの挿絵が一箇所に保管されることも、恐らく初めてのことであろう。 それを受けて開催された今回の個展では、コンパクトに画業を振り返ることが出来る。 挿絵、絵本、仏画、襖絵など幅は広いが、作者名を隠されてもわかる程、作風はブレない。 そして一番印象に残ったのは、やはり挿絵と装画。大仏次郎「天皇の世紀」、 赤川次郎「幽霊列車」、夢枕獏「陰陽師」を始め、文芸のあらゆるジャンルをカバー。 小説の本質を捉えながら、童心とユーモアあふれる“村上調”のイラストで描いている。 これは想像なのだが、村上さんは他の挿絵画家より描く時間自体は短いのではないか。 しかし、作品を頭の中で熟成させる時間は長い…。そんな気がしている。 いくら日記とはいえ、昨日で終わった展覧会のことを書くのはいささか気がひけるなぁ。 というわけで、ご連絡を頂ければ、今日買った村上さんの絵葉書を進呈致します。 (存じ上げない方との連絡方法を、思い浮かばないのが残念ですが…)
by funatoku
| 2004-12-20 01:02
| 演劇・映画・展覧会
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