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堀淳一『歴史廃墟を歩く旅と地図』講談社+α新書

「人に知られない、またはごく少数の人しか知らない、しかし私にはひどく魅力的で
味わい深い場所を、人の知らない路をたどって訪ねる。それが私の旅です」
副題にあるように「水路・古道・産業遺跡・廃線路」を歩いた最新の紀行文集である。

わずか4kmの間に5つもの“屋根つき橋”が架っている愛媛県の渓谷。
福沢諭吉の女婿で“電力王”と呼ばれた福沢桃介が、木曽山中に架けた橋。
雄別(阿寒町)、余市、二股(長万部町)の北海道の廃坑跡探訪。
駅前にゴーストタウンが広がる雄信内(宗谷本線)、小利別(ちほく高原鉄道)。
十勝海岸のトーチカ、根釧原野の飛行場など北海道の軍事施設の残骸。
高知空港近くの田圃の中にある七つの黒い建造物。
一昨年廃止された京福電鉄永平寺線(福井県)の廃線。
本州の最果を玩具のようなレールバスが走っていた南部縦貫鉄道(青森県)跡。
工業団地化計画が頓挫した苫小牧港開発公社線の跡地。
奥州藤原氏が設定した古道と言われながら、地図からも消えていた“秀衡古道”。
芭蕉ゆかりの鳴子近くの古道では、11/26に書いた今尾恵介さんとも同行。

堀さんはひと頃、色の名前や北海道地名のアイヌ音表記に強いこだわりを示して、
かつて日本エッセイストクラブ賞を受賞した平易な文体から遠ざかったかに見える時期が
あったのだが、ここに来て再び多くの読者に語りかける文体に戻ったようだ。
by funatoku | 2004-12-13 20:17 | 文庫・新書 | Trackback | Comments(0)


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